第3章 「フィードバックを利用する」 サンドイッチ・テクニック
前回はフィードバックをする時にタイミングが大切であることを勉強しました。
今回は、サンドイッチ・テクニックについて勉強してみたいと思います。
このブログで主要な参考文献としている『Management and Leadership Skills for Medical Faculity』では、このサンドイッチ・テクニックを説明する時にMary Preston先生が医学生に行わせたロールプレイ実習の様子を紹介しています。
このロールプレイ実習では、6人くらいの学生で1グループとして、グループ内で患者役と医師役を演じる学生を決め、グループ内で模擬診療のロールプレイを行ってもらいます。
そのロールプレイに対して参加した学生たちがそれぞれフィードバックを行う、という実習になっています。
具体的な実習の流れは以下のようになっているそうです。
- 患者役、医師役を決めて模擬診療のロールプレイを行う。
- Preston先生が医師役を演じた学生に対して「やってみてどうでしたか?」と質問する。
- Preston先生が患者役を演じた学生に、医師役を演じた学生へのフィードバックをするように求める。
- グループの残りの学生がそのフィードバックについて議論する。
- 最後にPreston先生が最も良かったと印象に残ったポイントについて話す。この時、最初にロールプレイの良かったところを述べ、続いてより改善させるための提案をし、最後に良かったところの要点を再度まとめるという「サンドイッチ・テクニック」を使う。
この実習を通して、学生は医学的な診察スキルだけでなく、医師ー患者関係に関わる振る舞いについてもフィードバックを受けることになります。
グループでの実習が始まったばかりの頃は建設的なフィードバックが難しかった学生たちも、実習を経るごとに慣れていくそうです。
するとより率直な意見ができるようになり、人格攻撃ではない中立的なフィードバックができるようになっていくと言います。
そして何より、グループ内での直接的なフィードバックの方が、専門家からのコメントよりも強力に医学生のパフォーマンスを改善させることに気がつきました。
訓練によってフィードバック力は身に付く、という良い例になりそうです。
しかし、医学生が実習に慣れていない頃は慎重に運用しなければなりません。
というのも、医学部に入学したての医学生というのはともすると競争心が強く、相手に対して批判的になってしまいすぎることがあるから、あるいは逆に批判されることに慣れていないからです。
研修医やレジデントのような若い医師の場合にも同様の状況になってしまう場合があるようです。
批判的で攻撃的なフィードバックはどうしても相手に防御的にさせてしまい、上手くフィー度バックが伝わらなくなってしまうものです。
上手くフィードバックをするためにPreston先生が提案しているのは
- 上述したサンドイッチテクニックを使うこと(ポジティブ、ネガティブ、ポジティブの順番で話す)
- 他人との比較をしないこと(えこひいきをしないことも含めて)
の2点なのだそうです。
この2点は医学部の学生や若い医師以外にも有効なアドバイスでしょう。
どうしても上司になると部下へのフィードバックをしなければならないものです。
タイミングとサンドイッチ・テクニックを使って効果的に「相手に聞いてもらえる」フィードバックをしたいものです。
次回からはフィードバックをするときの「自己管理」について勉強してみようと思います。