第3章 「フィードバックを利用する」 思い込み・先入観をなくす
今回からはフィードバックをする時に求められる「自己管理」について勉強していこうと思います。
今回は思い込み・先入観についてです。
当然ですが、フィードバックをしようと思う相手に対して思い込みや先入観がありすぎると、相手にとって不当な押し付けをしてしまっているかもしれません。
一方的に押し付けになるようなフィードバックをしようとしても、受け入れてはもらえませんよね?
今回はそんな思い込み・先入観をなくすことを勉強してみようと思います。
『Management and Leadership Skills for Medical Faculity』ではフィードバックをする前に行う自己チェックを紹介しています。
最初に、自分が相手に対して支配的な意図を持っていないかを確認します。
フィードバックが相手にどのような効果を及ぼして欲しいと思っているでしょうか?
自分自身に正直になって考えたとき、「相手をつけあがらせないようにしよう」という意図がないでしょうか?
そのフィードバックは患者さんの安全のためのものでしょうか?
そのフィードバックは、相手が次の行動をするための手助けになるでしょうか?
当然ですが、相手の行動を支配しようという意図で行うフィードバックはフィードバックではなく、一方的な価値観の押し付けです。
もちろん、フィードバックすることで診療に関する行動が改善されなければ意味がありません。
次に、思い込み・先入観について確認をしてみましょう。
その課題をどのように扱うべきか、全て分かっていると思い込んでいないでしょうか?
問題は全て解決したと考えていませんか?
「全部知っている」という思い込みは、どうしても人を盲目的にさせてしまうものです。
「解決策を全て知っている」という考えを棚上げすることによって、解決すべき課題や改善すべき行動に対する好奇心・探究心を促すことができます。
フィードバックを与えるにしても、過度な思い込みは見落としを生じさせてしまうかもしれません。
また、このような方法をとることでフィードバックを与えたいと思っている相手とのコミュニケーションおいてバランスを「関係」に傾けることが可能になります。
共通の課題を解決するためのパートナーや仲間、という意識を強めることになるのです。
相手が医学部の学生というような立場だと、臨床のプロフェッショナルである医師からこのような「パートナーシップ」的な関係になることに抵抗があるかもしれません。
しかし、このようなパートナーシップ的な関係性を徐々に教えていくことには意味があるのです。
多くのマネジメントの指導者が指摘してきたように、「命令をして支配する」という関係性よりも、お互いに意思の疎通ができるような関係性の方が永続的な解決策にたどり着きやすいのです。
例えば、手術手技についてフィードバックをしようと思ったとき、相手がどんなことを考えて工夫しようとしているのか?を考えずに頭ごなしに自分の方法を押し付けようとしても、うまくいかないでしょう。
ロボット支援下手術のような新しい手術では、もしかすると若い先生の方が機械の操作方法に詳しいかもしれません。
一方的に相手の行動を自分に合わせさせようとする意図を持ってするフィードバックは受け入れてもらえない可能性が高く、今回勉強したように建設的な議論ができるようなコミュニケーションを目指した方が良さそうです。
というわけで、次回は「決めつけ」を避けることを勉強してみたいと思います。