第3章 「フィードバックを利用する」 誰かのせいにするのをやめる
前回の記事では思い込み・先入観をなくすことの大切さについて勉強しました。
今回は誰かのせいにするのをやめる、です。
『Management and Leadership Skills for Medical Faculity』では「Avoid Attribution」と記載されています。
直訳すれば「帰属の回避」ですが「帰属」とはなんでしょう?
「帰属」とは、出来事や他人の行動や自分の行動の原因を説明する心的過程のこと、だそうです。
つまり、誰かや何かのせいにすること、というわけです。
誰かの行為に対して、「誰かのせいだ」と決めつけてかかってしまうと、しかもその思い込みのままにフィードバックをしてしまうと大変危険です。
もしもフィードバックをするときに相手に対して「あなたがどうしてそんな方法をしたのか知っている」と思い込むとしたら、それは相手がどう考えたかという背景を一切考慮せずに相手のせいと決めつけていることに他なりません。
相手に対して断定的な思い込みを持ってしまうことは危険なのです。
常に理性的な立場を取らなくてはなりません。
それには、例えば以下のような自由回答形式の質問をすると良いと紹介されています。
「このような行動/決断をした根拠はなんですか?」
「あなたが意図していたこと、もしくは目標としていたことは何でしたか?」
「あなたの行動/決断にはどのような影響がありましたか?」
「今回のような方向性を決めるにあたって根拠にしたデータは何ですか?」
「一連の行動で、あなたはどのような結論に達しましたか?」
これらの問いに対する応答を注意深く傾聴することで(もしかすると新しい発見が見つかるかもしれず)、「I statement」の形式に則ったより納得してもらえるフィードバックができるようになるのです。
「I statement」形式のフィードバックの例としては以下のようなものが紹介されていました。
「私もそう思いました」
「あなたが今回の問題についてどのように考えているのかがわかりました。その上で、私は別の選択肢を考えました、何故なら……」
「この問題に対するあなたの考え方を聞いて、あなたがこれまでどうやってきたのかがわかりました。その上で、私はあなたが目標もしくは意図していたことを達成するのに助けになるフィードバックをしたいと思います」
……直訳するとどうしても日本人的でないやりとりが多いような気もしますね。
少し僕自身でも代替案を考えてみました。
具体的なシチュエーションを考えた方がわかりやすそうなので、入院サマリーの記載方法について後輩とやりとりをする場面を考えてみます。
上司:「入院サマリーの記載ありがとう。忙しい合間で大変だったと思うけど、大丈夫だった?」
後輩:「どうしてもコピペばかりになってしまったんですが、なんとかかけたと思います」
上司:「読んでみてよく書けてたと思うんだけれど、一箇所だけ確認してもいい?現病歴の最後なんだけど、『微弱陣痛であるが、早産の既往もあるため入院となった』って書いたのは、自分で書いていてどう感じていた?」
後輩:「ちょっと自分でもどう書いていいのかわからなかったんですが、病棟の申し送りが『早産の既往もあるから入院』だったので……。でも、自分でもしっくりこなかったなと思っています」
上司:「なるほど、先生もちょっと違和感を感じていたんだね。じゃあ、少し考えてみたいと思うんだけど……」
……ちょっとはイメージしやすくなった気がします。
というわけで「帰属の回避」、誰かのせいと決めつけないフィードバックの方法を学びました。
次回は、前半でも少し紹介した「自由回答式の問いかけ」について勉強してみたいと思います。