医療の現場で求められる「統率力」

医療の現場で求められる「マネジメント」「リーダーシップ」についてなるべく具体的な事例を交えながら勉強してまとめるブログです。

第3章 「フィードバックを利用する」 自由回答式の質問を活用する

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前回は誰かのせいと決めつけをすることの危険性について勉強しました。

 

今回は自由回答式の質問を活用することについてです。

 

自由回答式の質問とは、英語で「Open-Ended Questions」であり、開放型の質問と訳しても良いかもしれません。

 

 

 

実は、前回の記事で引用した質問の中にも自由回答式の質問が含まれています。

 

「このような行動/決断をした根拠はなんですか?」

「あなたが意図していたこと、もしくは目標としていたことは何でしたか?」

「あなたの行動/決断にはどのような影響がありましたか?」

「今回のような方向性を決めるにあたって根拠にしたデータは何ですか?」

「一連の行動で、あなたはどのような結論に達しましたか?」

 

これらの質問は、英文表記で全て「What」から始まっているのです。

 

自由回答式の質問とは、すなわちこの「What」で始まる質問です。

 

このような自由回答式の質問によって対話を促すことになり、相手の防御的な態度を緩和させるうことが可能になります。

 

 

 

一方、「あなたは〜と考えましたか?」というような「Yes」もしくは「No」でしか答えられないような質問は、逆に「Closed ended question」ということになります。

 

このような「はい-いいえ」選択回答式の質問は、結局のところ誘導的な質問であることが多く、質問者がすでに答えを知っている場合がほとんどです。

 

「はい-いいえ」選択回答式の質問をした時点で相手に対してなんらかの「決めつけ」を行なっていることになるため、対話は続かず、相手の防御的な反応を惹起してしまうかもしれません。

 

「はい-いいえ」選択回答式の質問は、相手の意図を確認したい場合には効果的かもしれませんが、その質問に対する回答をもとにフィードバックをしようと思っている場面では控えた方が良さそうです。

 

 

 

少し具体的に考えてみます。

 

先に、「はい-いいえ」選択回答式の質問をした場合を考えます。

 

上司:「この患者さんに手術ではなく放射線療法を選択したのは、手術に対して自信がないからですか?」

部下:「いえ、そういうわけでは……(実際には患者さんが手術を拒否されたからなんだけどな……)」

 

特に、ネガティブな決めつけ的な質問は相手を萎縮させてしまうばかりになってしまいます。

 

 

一方、自由回答式の質問ではどうなるでしょう?

 

上司:「この患者さんの治療方針を放射線療法と決めた理由はなんですか?」

部下:「子宮頸癌 扁平上皮癌 IB1期で、まだお若いの患者さんですからまずは手術を勧めました。ただ、患者さんご本人が強く手術を拒否されたので、放射線治療を提案しました」

 

多少、後者の方が対話を促進しているように思われます。

 

 

 

ただ、自由回答式の質問も漠然と繰り返しては質問の意図が伝わりにくくなってしまいます。

 

特に、指導をしなければならないポイントが明確にある場合に「今日の手術、どうでしたか?」と漠然と質問しても質問された側は手術のどのポイントについて答えて良いのかわからなくなってしまいます。

 

「左基靭帯処理のところで出血しましたが、あの処理についてどのように感じましたか?」というように的を絞っても良いように思います。

 

 

 

というわけで、今回はフィードバックをするときに自由回答式の質問を活用することを勉強しました。

 

次回は怒りに任せてフィードバックをすることの弊害について勉強したいと思います。